全国労災病院臨床検査技師会血液検査における標準作業書第2版
はじめに
平成13年度に血液検査に関する標準作業書第1版を発行しました。
平成12年度および平成13年度に実施した血算・凝固サーベイおよびアンケート調査、平成14年度臨床検査技師研修会での討論内容を考慮して第2版を作成しました。
全国労災病院の標準化を目的として血液検査の標準作業書を作成しておりますが、標準作業書はデータの統一だけではなく、危機管理や緊急災害時にも活用できるように考えております。今後、病院評価を受けられる施設も増加すると思われます。検査マニュアルの参考としていただければ幸いです。
第2版もまだまだ改訂が必要な箇所があると思われます。今後もより完成された標準作業書をめざしますのでご理解とご協力をお願い申し上げます。
労災病院は北海道から鹿児島まで広範囲に散在し病院規模も50床から762床と幅が広く、各労災病院に特徴的な診療体型を有しており、検査科においても検体検査部門のブランチ化等、標準作業書に沿っての業務遂行が困難な場合があると思われますが、趣旨をご理解いただき可能な範囲で取り入れ、ご利用いただくことを希望します。
この標準作業書は査読委員の東先生より高い評価を得ていることを申し添えます。
凝固部門(PT、TT、APTT、フィブリノーゲン)
T.採血
1.採血は真空採血を基本とする。
2.採血管の抗凝固剤は105〜109mmmolクエン酸ナトリウムとする。
3.原則として採血針は21G以下を使用する。(21Gより太いもの)
4.駆血帯は2分間以内とし、1分間以内に採血を完了する。
5.採血完了後は素早くゆるやかに4〜5回は転倒混和をする。
U.採血後の処理
1.遠心前に検体凝固の有無と血液・抗凝固剤の比率等を確認し、検査に不適切な場合は再採血する。
2.遠心条件は3500rpm・10分間、スイング式(冷却)遠心機を使用する。
3.溶血、乳ビ、高ビリルビン等をチェックし、所見が認められたときは報告書に記載すること。
4.採血後、検査開始まで4時間以上を要する場合は血漿を分離して4℃で密栓保存すること。
5.凍結してあった血漿を溶解後測定する場合は37℃の温浴中ですばやく溶解し、速やかに測定すること。
注)凍結するとCold Activationにより検査結果が短縮する場合がある。
V.測定
1.測定30分前には測定機の電源を入れておく。
2.測定前に試薬容量、消耗品量、検体量等の確認を行うこと。
3.測定前に機器の動作状況を確認してから測定する。動作不良等が発生した場
合は検査を中止して原因を解消後、測定を再開すること。
W.PTおよびTTについて
キャリブレーション:ローカルISIを算出する。
試薬のISIは1.00付近のものを使用する。1.50以上は望ましくない。
1.試薬・キャリブレータの溶解が必要な時は添付されている使用説明書通りに行う。
2.蒸留水等で溶解する場合は市販品もしくはそれと同等の蒸留水を使用する。
3.溶解には正確なマイクロピペット等を使用する。
報告単位および形態:INRは必ず使用すること。秒、%、PT比については施設の判断とする。
機器による測定値と用手法による測定値を比較検討しておき、機器故障等の場合に用
手法と機器の乖離がどれぐらいあるかを把握しておくこと。
X.APTTについて
1.試薬の溶解が必要な時は添付されている使用説明書通りに行う。
2.蒸留水等で溶解する場合は市販品もしくはそれと同等の蒸留水を使用する。
3.試薬の溶解には正確なマイクロピペット等を使用する。
報告単位および形態:秒を必ず使用すること。%については施設の判断とする。
機器による測定値と用手法による測定値を比較検討しておき、機器故障等の場合に用
手法と機器の乖離がどれぐらいあるかを把握しておくこと。
Y.フィブリノーゲンについて
キャリブレーション:キャリブレータは使用試薬専用品を使用する。
1.試薬・キャリブレータの溶解が必要な時は添付されている使用説明書通りに行う。
2.蒸留水等で溶解する場合は市販品もしくは、それと同等の蒸留水を使用する。
3.溶解には正確なマイクロピペット等を使用する。
報告単位および形態:mg/dlを必ず使用する。
Z.精度管理について
1.日内変動と日差変動を管理する。
2.管理法はXbar-R管理、Xbar-R-Rs管理およびツインプロット等の2種類以上を
実施する。
コントロール:正常域と異常域の2種類以上を使用する。
1.
測定は検体測定前および一定のサイクルで測定し管理限界内にあることを確認する。管理外であった場合は原因を解消し、再測定すること。
2.2回以上の測定が望ましい。
3.コントロール試料の溶解が必要な時は添付されている使用説明書通りに行う。
4.蒸留水等で溶解する場合は市販品もしくは、それと同等の蒸留水を使用する。
5.溶解には正確なマイクロピペット等を使用する。
6.凍結してあったコントロール試料を測定する場合は37℃の温浴中ですばやく溶解
し、速やかに測定する。
7.コントロール溶解後の使用期限は原則として4℃保存で当日限りとする。ただし、メーカーによって差が認められるので使用説明書に従うこと。なお、小分け分後凍結している施設については安定性を確認後使用すること。
[.保守管理について
1.試薬等の保存については使用説明書を熟読し、指示通りに行う。
2.
機器の保守管理については、メーカーの保守管理講習を必ず受講し、十分な保守
技術を習得した後に、定期的な機器メンテナンスを実施する。
3.機器のメンテナンス記録を保管する。
血算部門
T.採血
1.採血は真空採血を基本とする。
2.採血管の抗凝固剤はEDTA塩とする。
3.原則として採血針は21G以下を使用する。(21Gより太いもの)
4.駆血帯は2分間以内とし、1分間以内に採血を完了する。
5.採血完了後は素早くゆるやかに4〜5回は転倒混和をする。
6.採血後はできるだけ速やかに測定する。
7.測定までに時間を要する場合(4時間以上)は4〜6℃で保存する。
(寒冷凝集素に注意)絶対に凍結してはならない。
U.測定
1.測定30分前には測定機の電源を入れておく。
2.測定前に試薬容量、検体量、設置場所の確認を行うこと。
3.測定前に機器の動作状況を確認してから測定する。動作不良等が発生した場合は検査を中止して原因を解消後、測定を再開すること。
4.測定までに時間を要する場合は、4〜6℃保存が原則で8時間以内に測定。
5.4℃に保存した場合は室温に戻してから測定する。
6.測定前に検体凝固の有無等を確認する。
7.測定前は転倒混和を20回以上実施したのと同等の攪拌を行う。
8.測定値とスキャッタープロット等を比較し、データの確認を行う。
9.赤血球恒数を確認し溶血等をチェックする。*1
10.赤血球凝集・白血球数・血小板数等の確認に血液像を用いる。*2
11.一定の管理限界を逸脱した検体は、依頼が無くても塗抹標本を作成し検鏡する。(一定の管理限界は診療科等によって異なるので各施設で設定)
12.キャリーオーバーが示唆されるときはブランク測定後に、検体の再測定を行う。
*1 溶血や赤血球凝集等が認められる場合、赤血球恒数が高値を示す。
赤血球凝集が認められた場合は37℃で加温後、再測定を試みる。
(赤血球凝集が寒冷凝集素の場合は37℃加温で赤血球恒数が改善する。)
*2 赤血球・白血球・血小板の凝集等のチェックに必須。
測定データについて、使用機器及び試薬の特性(特に干渉物質など)を考慮した
上で下記の事柄に注意し、施設に合った対応策をマニュアル化しておく。
1.
前回値チェック
2.
再検範囲の設定
3.
塗抹標本での確認
4.
計算板による視算
5.
血漿の希釈液での置換
6.
再採血、再採血直後測定と経時測定
7.
臨床所見の問い合わせ
8. パニック値の緊急報告
機器による測定値と用手法による測定値を比較検討しておき、機器故障等の場合に用
手法と機器の乖離がどれぐらいあるかを把握しておく。
V.キャリブレーション
1.メーカー専用のキャリブレータを使用する。
2.一定期間毎に行う。(期間は施設で設定)
3.分析系に大きく関与する領域のメンテナンスを実行したときは必ず行う。
W.精度管理について
1.日内変動と日差変動を管理する。
2.
管理法はXbar-R管理、Xbar-R-Rs管理およびツインプロット等の2種類以上を
実施する。
コントロール:機器メーカー専用のものを使用する。
1.正常域と異常域の2種類以上を使用する。
2.測定は検体測定前および一定のサイクルで測定し管理限界内にあることを確認。
管理限界を逸脱していた場合は原因を解消後再測定する。
3. 2回以上の測定が望ましい。
ヘマトクリットについてはヘマトクリット遠心機の測定値と血算機の測定値を毎日もしくは定期的に比較することが望ましい。
通常は血算機の方が遠心法より1〜2%低くなる。遠心法はPacked Cellとなり赤血
球の間にわずかであるが血漿成分が入り込む。そのことによりわずかながら高値を示
す。しかし、血算機は血漿成分の影響を受けないため遠心法よりも低値を示す。この
ことにより微少のずれを早急にチェックできる。
X.保守管理について
1.試薬等の保存については使用説明書を熟読し、指示通りに行う。
2.
機器の保守管理については、メーカーの保守管理講習を必ず受講し、十分な保守
技術を習得した後に、定期的な機器メンテナンスを実施する。
3. 機器のメンテナンス記録を保管する。
Y.その他(凝固・血算)
測定値の確認法として再測定が一般的であるが、血液部門以外のデータについても調査し参考にする。
以上
第2版 査読委員
東京大学医学部附属病院 検査部 東 克巳 先生